第四章 戦の前に

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   妖界に、大妖という者は存在しなかった。  臆病で、いたずら好きな妖達の楽園が、妖界であったのだ。  その頃、人間界にも妖はいた。人間と妖は共存し、妖の存在は時に人間を戒め、時に人々から崇められていた。  更には、人々の生活に妖が寄り添っていた。  それ故に人間界の妖は、妖界に憧れず人間界の暮らしを楽しみ、妖界の妖が人間界に興味を持っていたのだ。  当時の妖界は、ただ平安であった。  いたずら好きの妖としては、人間界に刺激的な事があると思ったのだろう。  人間が、妖を恐れる心。  妖が、人間界に憧れる心。  人が、妖を崇める心。  妖が、人間を従えようとする心。  様々な心が、形を変えていくと共に人間界と妖界のバランスが、徐々に崩れ出してくる。  人間が、妖を崇める心が薄れていく。  妖のいたずらが、人を傷付けるようになる。  いつしか人と妖は、対立していくようになってしまう。  妖は、人を襲いその身を喰らうようになる。  人は妖を封じ、滅する術を生み出していった。
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