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妖界に、大妖という者は存在しなかった。
臆病で、いたずら好きな妖達の楽園が、妖界であったのだ。
その頃、人間界にも妖はいた。人間と妖は共存し、妖の存在は時に人間を戒め、時に人々から崇められていた。
更には、人々の生活に妖が寄り添っていた。
それ故に人間界の妖は、妖界に憧れず人間界の暮らしを楽しみ、妖界の妖が人間界に興味を持っていたのだ。
当時の妖界は、ただ平安であった。
いたずら好きの妖としては、人間界に刺激的な事があると思ったのだろう。
人間が、妖を恐れる心。
妖が、人間界に憧れる心。
人が、妖を崇める心。
妖が、人間を従えようとする心。
様々な心が、形を変えていくと共に人間界と妖界のバランスが、徐々に崩れ出してくる。
人間が、妖を崇める心が薄れていく。
妖のいたずらが、人を傷付けるようになる。
いつしか人と妖は、対立していくようになってしまう。
妖は、人を襲いその身を喰らうようになる。
人は妖を封じ、滅する術を生み出していった。
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