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人気は全くなく、周囲の建物は殆どが崩れている。
最早ビルとも呼べない瓦礫が作る薄暗い路地の中を、一人の少女が必死に走っていた。長い金髪を乱しながら、人間とは思えない速さで駆ける。
「おい、待てってば!」
後方から追っ手の声が迫るが、待てと言われて素直に「はいそうですか」と従う馬鹿はいない。
(あともう少し──)
彼らを徐々に引き離し、目的地まであと少しというところで、突如少女の身体を弾丸が貫いた。
「くっ!」
咄嗟に物陰に隠れる。当たったのは脇腹の一発だけだ。この程度ならすぐに塞がるが、それよりもここをどう乗り切るかが問題だった。
「出ておいで」
殺伐とした町の中心に立つ長身の美青年。隠れる少女に優しい声音で促すが、少女ははっきりと恐怖を感じていた。
(逃げなきゃ)
本能が警報を鳴らす。
静かにその場を立ち去ろうとしたとき、少女の視界に再び弾丸が映った。
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