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「ったく人にデスクワーク押し付けんなよ、面倒臭え」
物音が殆どない町に長身の影がひとつ。
二十代前半のこの青年は、底を見せない鋭い緑色の瞳が強い光を放ち、決して脆弱さを感じさせない、驚くほど精悍で上品な顔立ちをしている。
身に纏う衣服は髪と同じく漆黒の色。その胸元には一枚の羽根が印されている。
漆黒の衣服に黒羽根の印は、彼が《鴉》の一員である証。
彼の名は霧生朔夜[キリュウ サクヤ]。二年前の幹部に就任した人物だ。
休憩がてら27区まで散歩に来ていた朔夜の視界の端に、金色のものが見えた。
「ん?」
目を凝らして見ると、ビルの横にある瓦礫の中に人が埋まっていた。
興味本位で近付き、瓦礫を除ければ顔があらわになる。見たところまだ若い少女だが、額からは血が出ていた。
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