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身体を助け出してみると、服はボロボロであちこちに傷が出来ている。特に酷い左脚は肉が抉られていた。
「仕方ねえな……」
放っておく訳にもいかず、朔夜は華奢な身体を両腕で抱き上げ、《鴉》本部へ向かった。
†───†
ゆっくりと重い瞼を持ち上げれば見慣れない天井が目に入った。
上体を起こして周りを見る。どうやら自分は今までベッドに寝ていたらしい。
(黒い……)
自分が寝ていたベッドと傍にある棚、ソファーに丸テーブルと目に入る全ての家具が黒い。ここまで黒を強調する意味はあるのか。
ふと自分の身体に包帯が丁寧に巻かれているのに気がつく。
(誰が?)
ということは自分は重傷だったのだろうか。思い出せないが、特に痛みも感じない。
そろりと腕の包帯を外しかけたとき、
「起きたか」
扉を開ける音と共に、黒い青年──朔夜が現れた。
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