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「…いくか…!」
ギターを握り、タオルを首にかけた後
健児はゆっくりとステージへ向かう…
ステージの裾から漏れる
スポットライトの熱気に触れたとたん
ギターを握ったその掌に
じわっと汗が滲んできた…
目の下にプツプツと水泡が上がるのが解る…
一瞬立ち止まった後
もう一度強く、ギターのネックを握り締めると
また一歩足を前へと踏み込んだ…
十代の頃に想い描いた未来とは
まるで掛け離れていたけれど
健児を突き動かしたその衝動は
あの頃より… 少しも色褪せてはいない…
客なんていやしない…
でもそんな事、関係無かった…
いま此処で歌う事が…
想いを伝える事が…
今の健児にとって全てであったから…
そしてこの夜こそが
全てへの第一歩だったから…!
毅がベースを担ぐ…
涼平がスティックケースを掴む…
三人が上がるステージのスポットライトは
いつもより少し… 眩しく感じる…
全ては始まろうとしていた――!
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