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■第一章:健児■
‐鴉‐
目が覚めると健児は、台所へ向かい
烏龍茶を手に取って
それを一気に飲み干した……
時計の針は、もう既に午後の1時を回っていて
両親が仕事に出かけている為か
家の中はひっそりと静寂に包まれている……
部屋へ戻ると健児は、ギターを手に
チャカチャカと適当に遊び始め
それにもすぐに飽きると
タバコに火を灯して一服……
けだるさ混じりの煙を
不味そうに吐き出した……
この気が滅入りそうな、何も無い空間で
ただボーっとタバコを吹かしながら健児は
もう一度、立て掛けてある
ギターにその手を伸ばす……
……と、その時――
携帯電話の着信音が
部屋いっぱいに響き渡った……
……いつもの電話だ――!
そう……
健児の一日は、いつも此処から始まる……
電話を切るとシャワーを浴び
鏡の前に立って
掌の上で伸ばしたワックスを
髪の毛いっぱいに塗りたぐった。
その後、一ヶ所ずつ摘み上げた髪の毛に
ハードスプレーを吹きかけた後
ドライヤーの熱風で
それを丁寧に仕上げる……
自慢のスパイクヘッドは今日も絶好調だ――!
単車の鍵と
セブンスターをポケットに
健児が部屋を後にしたのは
午後3時を迎える頃……
いつも通りの時間――
ヘルメットもかぶらずに単車に跨ると
仲間たちの集まる
いつもの場所へとアクセルをまわす……
健児は17歳だった――
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