■第一章:健児■

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静岡県浜崎市―― 静岡でもっとも西に位置するこの街こそが 健児が生まれ育った、この物語の舞台である。 単車を走らせた健児は いつものあの場所へと先を急ぐ……! 「チャッス!」 「健児さん、おはようございます♪」 ファミリーレストラン「デイリーズ」に着くと 駐車場の隅で屯している少年の群れの中で 健児は何度もそう声を掛けられた。 そのほとんどが見知らぬ顔…… 最近では人の出入りが多くなった為か 名前も知らない様な少年が 古くから付き合いがあるかの様に 馴れ馴れしく健児の名を叫ぶ…… 群れの中心には、傷だらけの身体に 身ぐるみを剥がされた一人の少年が 正座をしていて、涙ながらに 頭をこすりつけて助けを求めていた…… 「こいつ駅前で調子こいて喧嘩売って来たんで みんなで拉致って、ボコしてた所なんスよ♪」 その無残な姿を目に 健児は唇を噛み締めながら 「……もう……その辺で止めてやれよ……」 そう呟いて駐車場を後にする…… 店の階段を上がると扉の向こうでは 顔なじみの仲間が 楽しそうにダベっている姿が見えた。
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