雪降る夜に

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また俺や……。 いつも俺はあいつの人生を掻き回す…。 こんな俺、死んで当然や。 あいつは生きなかん。 俺を犠牲にしても…俺が死んでも……… あいつは、生きなかん。 幸せにならなかん。 気付けばおれは両手を握りしめていた。 『決心がついたようですね。』 アヤベの寒気がするほど冷たい声に俺は顔をあげた。 『おん。………はよ、殺してくれ。』 『本当に、よいのですね?』 アヤベの問いに、俺は何の迷いもなく頷く。 『代理死契約書にサインを。』 アヤベが空中で手を降ると、金色にきらきらと輝く羽ペンと、何やら真っ黒な紙がふわりとあらわれた。 『ここです。お名前を…。』 sign そう書かれた欄にペンをあてると、 『がぁッ!?』 心臓を鷲掴みにされたような痛みが胸を走った。 あまりの痛みにサインをする手が止まる。 『何をなさっているんです?早くサインを。』 アヤベは胸を掴んで身をよじらせる俺を対して気にすることなくサインを促す。 ……こいつ…感情ないんか…? 『がぁッ…は…ぁ…ぐ…』 サインを進めるうちに痛みは増していく。 カタカタと手が震えるたびサインも汚く歪んでいく。 こんな痛いなんて聞いてへんし……ッ 『がぁぁッ!…………はぁ、は、は……』 サインを書き終える瞬間、一際大きな痛みが体を襲った。 が、もう痛みはない。 俺の名が刻まれた契約書をアヤベは何度も確認するとクルクルと丸め、マントの中へしまった。 『おま…こんな、痛み…聞いとらん、で……』 息をきらしながらアヤベを睨むと、アヤベが少し微笑んだ。
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