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『藤原一裕さん18歳。高校生男性。重度の喘息発作。意識レベルサーチレーション共に低下。非常に危険です。ご家族に連絡をとるので受け入れお願いします。』
もう一人の隊員が俺の携帯を勝手に見ながら病院に連絡した。
あー、今日だけはあかんかったのに。
おかんとおとんを、あいつに独り占めさしたりたかったのに。
『待っ……』
待ってください。そう言おうとしたが息が出来ひんし、酸素マスクつけとるしで、全く声が出んかった。
それでも、と胸元を掴んでいた手を放し、必死に隊員の持つ携帯に手を伸ばす。
そして、
『ちょっ…どうしましたか!?』
思いっきり叩き落とした。
今日だけは…
ほんまに。
俺がとるわけにはいかんねん。
と言いつつも。
最悪の結果になってまうかもわからん。
最近の中でも一番苦しいで。
あかんかもわからんな。
『げほっ…あ……』
咳が激しくて息を吸う暇もない。
息を吸えても気管支が閉じすぎて全く酸素が入ってこん。
銀色に光る医療器具に一瞬写った俺の顔はひどく青ざめとった。
苦しい。
苦しい。
死んだ方がマシかもな…
俺の鼓動と意識が限界を迎えようとしたその時、
サイレンが、やんだ。
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