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『………ッ?』
サイレンだけやない。
俺の体につけられとるいろんな機械も、受け入れ先の病院と繋がっとる無線も、外を走る車のエンジンも、全てが静寂につつまれた。
無音。
ただ俺のゼーヒューうるさい呼吸音だけが響いていた。
なんやこれ。
よく見ると止まっとんのは音だけやなくて、世界も止まっとった。
この車はもう走ってない。
うわ、なんや絶望的なんやけど……
『おやおや。また間違えてこちらに来てしまいましたか。』
いきなりの声に驚いて右を見る。
すると、黒いローブに身を包んだ男が立っとった。
うっわ。みた感じまんま死神。
世界止まっとるし、いきなり黒服の男(死神?)くるし…
あーあ、なるほどな。
お迎えやな…
『あなたを迎えに来たわけではありませんよ?藤原一裕さん。』
どういうことや?と、その死神的なやつに聞こうとするが、激しく咳が出てそれどころやない。
『ずいぶんと苦しそうですねぇ。少し、力を貸してあげましょう。』
死神的なやつはそう言うと、俺の胸の前で手を降った。
するといきなり狭くなっとった気管支が開いた。
いきなり酸素が入ってきてまた激しく咳込む。
だが暫くすると先ほどまでの苦しさが嘘のように普通に息が出来るようになった。
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