雪降る夜に

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『つまり、あいつが助かるには誰かが変わりに死ななあかん、ゆう事やろ?』 アヤベは俺の言葉にうなづくと再び説明を始めた。 『代理死の条件は、代理人が承諾していること。契約者が寿命の延長に値する事。そして、代理人と契約者の、永遠の死。』 永遠の死。 その言葉はなぜか闇をまとっていて、耳にべったりとはりついた。 『永遠の…死…?』 『永遠の死、とは死後の成仏権ならびに転生権の放棄。人は誰しもその死後に魂の成仏と人への転生が行われます。ところが代理死の場合、契約者と代理人ふたりともがその権利を放棄しなければなりません。言い換えれば……死にっぱなし。』 契約者…つまりあいつまで。 でも、今すぐ死んでしまうよりはマシ、か。 『その後は教育の後、生命の契約者になります。強制的に。』 わたしのように。とつけたしたアヤベは自嘲ぎみに口角をあげて笑った。 『お前も代理死を……?』 俺の問いにアヤベは両腕を広げて首を傾げた。 『さあ?死後は生前の記憶は消されます。それに別に代理死を行った人のみが生命の契約者になるわけではありません。』
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