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「貴方が――犯人、だったのですネ」
漸く辿り着いた念願の答えだというのに、犯人を追い求めていた時の溢れんばかりの覇気も目の輝きも、今の彼にはない。
彼の言葉は、溜息のように口から吐き出される。
「いやぁ…自分で自分が恥ずかしくなりますヨ。よくもまあ、あの犯行をやってのけた当人の前で、得意気に推理を披露したものです」
ふはははは。自嘲と皮肉をたっぷり込めて、大袈裟に彼は笑う。
「さぁて、このまま僕が一人で演説を続けるのは構わないのですが、先ほどのミスが僕に自害させかねませン。そろそろ、答え合わせといきましょうヨ。……ネ?ハル君?」
そう言われ、犯人として告発された晴仁は苦笑いを浮かべた。
ちらっと探偵の目を見て、肩を竦める。しかし、それだけで何も言わない。
「あはは……それは、無言の肯定と捉えて良いのかな?それも良いけど、僕はそういうの、好きじゃないんだヨ」
「なんたって僕は――完全無欠の超探偵様だからネ☆」
「……どうしてだ?」
「おや?ハル君。認めるのですカ?」
「どうしてそう思うのか、と聞いている」
観念したのか呆れたのか、晴仁はやっと口を開いた。しかし「どうしてか」と聞くのが彼らしい。認めはしない、しかし、否定もしない。まず彼の推理を確かめようとしているのだろう。
だから探偵は、真実を彼に突きつける。それが彼の望むことであるとしても、そうでなくとも。それこそが、探偵の役目なのだから。
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