『少女の声』 1

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              「――くどいッ!!」  その後も原稿用紙3枚半に渡って『晴仁』という男を讃えるウザったい探偵の台詞が続く。我慢の限界だ。腹癒せに原稿用紙の束を机に叩きつけてみた。 「な、なんてことをー!私が頑張って書いた作品にケチつけるのか、ワトスン君!!」 「僕はワトスンじゃないですから!!」  叫びながら、叩きつけたその束を思いっきり空中にばら撒いた。    此処は、私立雨洗美[あまらび]高校の『ミステリー研究部』の部室だ。  時刻は夕方。授業を終えた僕はいつものように部室にやってきた。理由は明確。僕がミス研の部員だから。  そして目の前で散らばった原稿用紙を拾い集める彼女に命令され、小説を読まされていた。理由は明白。彼女がミス研の部長だから。
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