その1

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『うわ、超美人…』 幸平と日向と数人の客の言葉が綺麗に重なった。 女性は周囲の感想には特に反応を示さず、軽く店内を見回してから空いている席に向かって歩き出す。 「…っ…」 だが、数歩歩いた所で何もないはずの床に躓いてバランスを崩した。 「あ、危ない!」 いち早く動いたのは、調理場から出た幸平だった。 一歩踏み込んだように見えた次の瞬間には、女性のすぐ側まで移動して、彼女の体が傾ききる前に抱き留める。 その鮮やかな動きに、周囲から感嘆のため息が漏れた。 「大丈夫?」 「うん。ありがとう。」 落ち着いたアルトの声で頷き、女性は無表情のままの顔を幸平に向けた。 「…中々の、反射神経と速度だな。」 「え?あ、うん、ありがとう。」 「アンドロイドか。」 「うん、そう。」 問いかけでなく断定の形で発せられた女性の言葉に、幸平は素直に頷いてから小さく首を傾げる。 「お姉さんもアンドロイド?」 「そんなところだ。」 問いに答えて、女性は手近なカウンター席に座った。 「……焼き鮭定食を。」 「うん。じっちゃん!焼きシャケ定食一つ!」 「それと水を、できたらピッチャーごと。」 「ピッチャーって……これぐらいあるけど…」 さらりと告げられた注文に、幸平は目を丸くしてピッチャーの大きさを手で表すが、女性は変わらない無表情で頷く。
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