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『うわ、超美人…』
幸平と日向と数人の客の言葉が綺麗に重なった。
女性は周囲の感想には特に反応を示さず、軽く店内を見回してから空いている席に向かって歩き出す。
「…っ…」
だが、数歩歩いた所で何もないはずの床に躓いてバランスを崩した。
「あ、危ない!」
いち早く動いたのは、調理場から出た幸平だった。
一歩踏み込んだように見えた次の瞬間には、女性のすぐ側まで移動して、彼女の体が傾ききる前に抱き留める。
その鮮やかな動きに、周囲から感嘆のため息が漏れた。
「大丈夫?」
「うん。ありがとう。」
落ち着いたアルトの声で頷き、女性は無表情のままの顔を幸平に向けた。
「…中々の、反射神経と速度だな。」
「え?あ、うん、ありがとう。」
「アンドロイドか。」
「うん、そう。」
問いかけでなく断定の形で発せられた女性の言葉に、幸平は素直に頷いてから小さく首を傾げる。
「お姉さんもアンドロイド?」
「そんなところだ。」
問いに答えて、女性は手近なカウンター席に座った。
「……焼き鮭定食を。」
「うん。じっちゃん!焼きシャケ定食一つ!」
「それと水を、できたらピッチャーごと。」
「ピッチャーって……これぐらいあるけど…」
さらりと告げられた注文に、幸平は目を丸くしてピッチャーの大きさを手で表すが、女性は変わらない無表情で頷く。
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