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「……幸平、ちょっとそこに座れ。」
「え、何?」
「ひな、お前さんもじゃ。」
「え?あたしも?」
自分に話がくると思っていなかった日向は、幸平と顔を見合わせて首を傾げつつも、手近にあったイスを引き寄せて大和田と向かい合うように並んで座った。
「幸平、時計は持っとるな?」
「うん。」
問いかけに、幸平は左手首につけている腕時計を見せる。
赤と黒を基調とした腕時計は、大和田から決して外すなと耳にたこができるほど言われていて、その言いつけを守って水仕事の時でも滅多に外さない。
「これ、父さんがくれたものなんだよね?」
「そうじゃ。決して手放すなと、あいつは言っとった。」
頷き、大和田は苦悩の見え隠れする深いため息をついた。
「…じっちゃん…?」
「何から、話したらいいかの……」
「何だっていいよ。父さんの話、してくれるんでしょ?」
大和田の呟きに真剣な面持ちでそう答えた幸平は、自然を身を乗り出していた。
隣の日向も、どこか心配そうな面持ちではあったが、聞く体勢でいる。
「…結論から言おう。」
わずかに沈黙を置いてから、大和田は意を決した様子で幸平を見た。
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