その2

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「お前さんの製作者…父親の望月幸造は、何かに追われとる。」 「何か…?」 「わしも詳しくは分からんかった。ただ、お前さんを預けにここへ来た時点で、何かから逃げとるようじゃった。」 「それが何かも言う時間がなかった、ってこと?」 「ああ。じゃが、その望月から今日、手紙が来た。」 「父さんから!?」 「わし宛ではあるが…」 そう言って大和田は、先程まで読んでいた紙を幸平に渡した。幸平は戸惑ったように大和田を一瞥してから、真剣な面持ちで手紙に目を通す。 「『大和田へ。連絡にこんなにも時間がかかってしまってすまない。君達や幸平がまだ無事でいてくれて何よりだ。あの日私は、ある組織から脱走の計画を企てていた。信じられないかもしれないが、その組織は世界征服を企んでいる。そしてその為に幸平やその他大勢の人間やアンドロイドを、組織の先兵として使おうとしていた。その実態を知った私は幸平を連れて組織を抜けた。』……これって…」 「何それ…そんな、マンガに出てくるような組織があるの?」 「あいつはこんな手の込んだ嘘をつくような奴じゃない。」 半信半疑といった風の日向に、大和田はきっぱりと言い切った。 幸平は困惑した表情で日向と大和田とを見るが、大和田に視線で先を促され、また手紙に目をやって朗読を再開する。 「『君は既に気づいているかもしれないが、幸平は』…」 だが、その途中で出入り口の引き戸が叩かれる音が響いた。 「すみません。昼間来た者なんですが、こちらに忘れ物をしてしまったようなんです。」 摺りガラスの向こうから、穏やかな男性の声がする。
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