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「はははっ!勇ましいお嬢さんだ。」
腕を広げて睨みやる日向に、男は噴き出しながらそう評価を下すと一歩踏み出し、顔から張り付いた笑みを取り去った。
「きゃっ!」
次の瞬間、見えないほどの動きで振るわれた手が、日向を退けた。
軽々と吹っ飛ばされた日向は、並べられていたテーブルとイスを巻き込んで床に叩きつけられる。
「ひな!」
「っ!ひなちゃん!!」
「だが、口の聞き方には気をつけなさい。」
乾いた声で言い放つと、男は振るったばかりの手を軽く挙げた。
それと同時に、戸の無くなった出入り口から揃いの黒いジャケットを着込み、覆面を被った五人組がぞろぞろと入ってきて、あっと言う間に幸平達を取り囲んだ。
「抵抗する場合は実力行使も構わない。と、命令が出ています。これって、邪魔者を消していい、ってことですよね?」
「っ!」
言い放った男は感情の伴った笑みを浮かべていた。
弱い獲物を追いつめてなぶる、嗜虐的な笑み。
その笑みを浮かべたまま、男はサングラスを外す。その奥で光っていた硝子玉のような目がぎょろりと動くと同時に、変化が起こった。
土が乾くように男の顔にいくつもの線が浮かんだかと思うと、口元が裂けていく。同時に、みちみちと繊維質のものが弾けるような音がして、男の体格が一回り以上大きくなった。
変化が終わった時、集団の先頭に立っているのは人の形をした蛇という、矛盾した存在だった。
そうして、男だった者は異形となった。
「怪人…!?」
「見るノは初メテですカ?」
「っ!!」
ちろちろと舌を出し、ノイズが混じったような声で問う男に、大和田が驚愕の表情で息をのむ。
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