その3

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その様子をどうという風もなく見つめながら、『水妖』は続ける。 「奴らは君をというよりは、君の持つ動力炉を狙っている。」 「俺の、動力炉…?」 「そうだ。今は時間がないから詳しい説明は省くが、簡単に言えばその動力炉は通常の戦闘用アンドロイドが搭載しているものより遙かにスペックが高く、そう簡単に量産できるものでもない。」 そこで一息つき、『水妖』は警戒するように周囲を見回してから全員に視線を戻す。 「その動力炉を持ち続けている限り奴等は君を狙い、抵抗するならば君の身体だけでなく周囲の者にも害をなすだろう。」 「な…そんなの勝手よ!」 「目的の為にいちいち手段を選んでいては非合理的だ。その点においては、奴らは実に合理的だと評価できる。」 「あんたどっちの味方なのよ!?だいたい、」 「……何で、」 「幸平?」 「何で、父さんは俺を造ったんだろう…?」 自身の両手を見下ろし、幸平は『水妖』に噛みつきかけた日向を遮るタイミングで、独り言のように呟いた。 普通の人間と、普通に町を歩く家庭用アンドロイドと何ら変わらない手。 けれどこの手は何かを壊すことも、触れたものの命を終わらせることも簡単にできるらしい。 「人殺しの道具として造ったんなら、何で外に出したの…?どうしてヒューマ(家庭用アンドロイド)じゃないって、教えてくれなかったの…?」 最初からそういった存在なのだと教えられていたら、きっとこんな思いにはならなかった。 自分はあの男が言った通り、兵器として生きていた。 「俺…どうしたらいいの…?!」 自分の存在意義は、何なのだろう?
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