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「……幸平、」
両手を握りしめ、うずくまるようにうつむいた幸平を、大和田が静かに呼んだ。
一度身じろぎ、躊躇いながらも幸平は顔を上げる。
「望月はな……簡単に言うと馬鹿なんじゃ。」
「え…?」
「あいつは後先考えずに思いついたもんを造りだして、できあがってから使い道を考える。そんな奴じゃ。学生時代なんかは、教授連中にもよく怒られとったなあ。もっと考えろー!なんてな。」
「じ、じっちゃん…?」
懐かしむように、笑みすら浮かべて思い出話を始めた大和田を、幸平は目を白黒差せて見ている。日向も怪訝そうにしているし、『水妖』は無表情のままだが話を中断させようとはしなかった。
「幸平、望月は後先も考えんで色々しでかすバカタレじゃが、たとえ最終的にであろうと誰かを悲しませるようなことは絶対にせん。確かにお前さんはアームズかもしれんが、望月はそれだけでよしとしなかったから、お前さんを連れ出したんじゃろう。その力をどう使うかはお前さん次第じゃ。」
「俺、次第…」
「…望月幸平、現在の君には選択肢が三つある。」
会話がひと段落したと判断したらしい『水妖』が、相変わらずの無表情のまま言い放つ。
「選択肢?」
「一つは、このまま奴等に投降し、奴等の言う通り殺戮兵器として動く。」
「な…!」
「だがこの選択をした場合、私はこの場で自己存在に代えても君を破壊する。」
反論の態勢を視線だけで押さえつけて、『水妖』は続ける。
「二つ目は逃げる。『コレクター』の目の届かない所が存在するかは疑問だが、今の生活を捨て己を捨て逃げ続ける。この場合我等『カウズ』は君をサポートするが、大和田行時と柾日向はその範囲外だ。彼等が死のうがどうしようが、我々の関知すべき所ではない。」
「………三つ目は?」
「三つ目は…っ!」
最後の選択肢を述べようとしたところで、不意に『水妖』が明後日の方向を向いた。
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