その3

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わずかに遅れて幸平も気づき、立ち上がる。 「来た…!?」 「ああ。だが戦闘員だけのようだ…あの男は」 「見つけましたよ。」 「――っ!!?」 冷え冷えした声と同時に、『水妖』が背にしていた壁が突如砕け、その奥から伸びてきた何かが彼女の首に巻き付いた。 「しまっ、た……」 『水妖』の首に巻き付いて絞め上げているのは、太い縄のようにも見えた。だが縄ではない。 びっしりと張り付いた鱗が、それが巨大な蛇の尾だということを示している。 「手間をかけさせないでくださいよ。弱小組織の小間使い風情が。」 芝居がかった口調で、尾の持ち主が瓦礫の向こうから姿を見せるのと同時に、『水妖』の両足が地面から浮いた。 「…っ…くっ……」 「先程は失礼しました幸平君。やはり、全身怪人化はいけませんね。つい思考が暴力的になってしまう。」 くすくす笑いながら、男は肩をすくめた。黒いコートの裾からは、『水妖』を絞め上げている蛇の尾が伸びていた。 「このポンコツが何を言ったのかは分かりませんが、耳を貸す必要はありませんよ?君は我等『コレクター』の同志。兵器としての生き方こそ、正しい道なんですから。」 「………嫌だ。」 「ん?」 「俺は…『コレクター』にはならない。」 きっぱりと言い切って、幸平は日向と大和田を後ろに下げながら立ち上がった。 「俺は兵器なんかにならない。」 「戯れ言を…」 「…望月、幸平…」 笑みを浮かべたまま呆れたように息をついた男を遮るように、『水妖』が苦しげな息を漏らしながら幸平を見る。
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