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わずかに遅れて幸平も気づき、立ち上がる。
「来た…!?」
「ああ。だが戦闘員だけのようだ…あの男は」
「見つけましたよ。」
「――っ!!?」
冷え冷えした声と同時に、『水妖』が背にしていた壁が突如砕け、その奥から伸びてきた何かが彼女の首に巻き付いた。
「しまっ、た……」
『水妖』の首に巻き付いて絞め上げているのは、太い縄のようにも見えた。だが縄ではない。
びっしりと張り付いた鱗が、それが巨大な蛇の尾だということを示している。
「手間をかけさせないでくださいよ。弱小組織の小間使い風情が。」
芝居がかった口調で、尾の持ち主が瓦礫の向こうから姿を見せるのと同時に、『水妖』の両足が地面から浮いた。
「…っ…くっ……」
「先程は失礼しました幸平君。やはり、全身怪人化はいけませんね。つい思考が暴力的になってしまう。」
くすくす笑いながら、男は肩をすくめた。黒いコートの裾からは、『水妖』を絞め上げている蛇の尾が伸びていた。
「このポンコツが何を言ったのかは分かりませんが、耳を貸す必要はありませんよ?君は我等『コレクター』の同志。兵器としての生き方こそ、正しい道なんですから。」
「………嫌だ。」
「ん?」
「俺は…『コレクター』にはならない。」
きっぱりと言い切って、幸平は日向と大和田を後ろに下げながら立ち上がった。
「俺は兵器なんかにならない。」
「戯れ言を…」
「…望月、幸平…」
笑みを浮かべたまま呆れたように息をついた男を遮るように、『水妖』が苦しげな息を漏らしながら幸平を見る。
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