その3

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「君は確かに素人だが、戦闘の才はある。闇雲に動かず敵を迎え撃て。そうすれば、少なくともそこの二人は守れる。私も出来る限りサポートはする。」 「う、うん…!」 「同志を拒んダことを後悔スるがイイ!!」 蛇男の号令に、蜥蜴怪人達が一斉に動く。 同時に『水妖』も怪人の群に向かっていき、幸平は日向と大和田を庇うように二人の前に立ってしっかりと地面に両足をつけた。 「幸平…」 「大丈夫。二人のことは、俺が絶対守るから…っ!」 不安げに呟く日向に幸平が力強く答えた直後、蜥蜴怪人の一体が幸平に向かって飛びかかってきた。 振るわれた丸太のような腕を受け流し、その勢いと反動を利用して、相手に回し蹴りをくらわせる。 次いで飛びかかってきたもう一体に、幸平は一体目を踏みつけたような状態のまま拳を叩き込んだ。 蜥蜴怪人の体がくの字に折れ、そのまま地面に崩れ落ちる。 「……すご……」 自分の拳を呆然と見下ろし、幸平は咄嗟に動いた、動けた自分に心底驚いた。 確かに自分は戦闘用らしい。まだ動揺は残っているが、今はそんなものに囚われている場合ではない。 「よし…!」 「幸平、」 拳を握り直した幸平に、大和田が声をかけた。 幸平は周囲を見回しながら「何?」と聞き返す。 「望月からの手紙に、その時計の使い方が書いておった。」 「時計の使い方…?」 無意識に左手の時計に触れながら周囲を見回すが、蜥蜴怪人を指揮しているはずの蛇男の姿が見えなくなっていた。 残りの蜥蜴怪人の相手をしている『水妖』も、怪人達と交戦しながら周囲に目をやっている。 「その時計には、お前さんが戦う為の力が組み込まれとるらしい…名を、」 「望月幸平!上だ!」 「っ!?」 『水妖』の声に反応して、幸平はとっさに横に跳んだ。 直後に今まで幸平が立っていた場所に蛇男が落ちてくると、間を置かずに伸びた長い尾が幸平に巻き付いた。 「うわっ!?」
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