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「……何じゃ、そんな話か。」
常連の言葉に、大和田は途端に興味をなくしたように嘆息した。既に何度も繰り返されている会話は、大和田の中ではとっくに擦り切れてしまっている。
「そんな話ってことはないだろ!」
「男手一つで育てた、可愛い姪っ子の将来の話だぞ?」
「…あのな、」
「おあいにく様!」
言い募る面々に呆れた様子の大和田が言い返す前に、高い声と一緒に水が一杯まで入ったピッチャーがどんと置かれた。
輪って入った声と重い音に、常連達は揃って肩を跳ねさせてから声の主に振り返る。
大きく勝ち気そうな色の浮かぶ黒の瞳に、瞳と同色の髪の童顔な女性が、眉間に似合わないしわを寄せて立っていた。
「おー、ひなちゃん。」
「あたし、幸平のことそんな目で見たことないんで。」
話題の主であるひなこと柾日向は、腰に手を当ててふんと息をついた。
彼女の動きに合わせて、ポニーテールにしている長い黒髪が揺れる。
「ほら!もう1時よ?いつまで昼休憩してるつもり!?」
「またカミさんにどやされるぞ。」
「おっと、もうそんな時間か。」
日向と大和田に促され、店内にかけられている時計を見た常連達は、名残惜しそうに腰を上げた。
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