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「じっちゃん!ランチBとラーメン一つずつ。あ、みんなもう帰るの?」
帰り支度を始めた常連達に気付いた幸平が、注文を伝えてから首を傾げ、常連達も苦笑混じりに頷く。
「そろそろ店番に戻らないと、カアちゃんに怒られちゃうからな。」
「また明日も来るよ。」
「うん!」
「幸平、塩定あがったぞ。」
「あ、うん!じゃあねみんな!ありがとうございましたー!」
にこにこ笑って手を振る幸平に、常連達も手を振り返して出入り口に向かう。それを見届けながら、幸平は出来上がった料理を持って席に向かった。
「お待たせしましたー!」
「……ひな、」
「?なあにじっちゃん?」
「本当の所、幸平のことどう思っとる?」
「もう!じっちゃんまで!」
叔父の声にからかいが混じっていることに気付いた日向は、積み重ねた空の食器をどんと置きながら、憤慨して息をついた。
席をかたしながら客と談笑している幸平を見て、すぐに視線を大和田に戻すと睨みやる。
「だから、あたしは幸平のことそうゆう、恋愛対象とかで見たことないってば。弟よ弟。起きてもうすぐ一年も経つのに子供みたくぷわぷわしてるし、引くぐらい運動神経いいかと思ったら何にもない所でけっつまずくし。目が離せないったらありゃしないわ。」
「うわっ!」
言っている側から、幸平が空の食器を持ったままイスに足をぶつけて躓いた。
そのまま転倒するかに思えたが、幸平は持っていた食器を垂直に放ると躓いた足を軸にくるりとターンをして体勢を立て直し、落ちてきた食器を何事もなくキャッチした。
食器の中に残っていた水やスープは、一滴もこぼれていない。
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