第三章

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だが、ぶよぶよした感触に阻まれ扉に触れることができない。 まるで見えないゼリー状の壁がそこにあり、この教室を取り囲んでいるかのようだった。 「そんな……馬鹿な!」 俺は歯を食縛りながら見えない壁をぶん殴る。 壁はびくともせず、そして俺の拳にも痛みは走らなかった。 「無駄な足掻きはその辺でいいかな?」 うきき、と鳥肌モノのおぞましい笑い声を上げた男は不気味な影のある表情を顔に貼り付け歩み寄ってきた。 「それじゃー、さっさと死んでくれる?」 男はそう言い、右手をデコピンの形にして俺に向け、中指をはじいた。 それは一瞬のことである。 本当に奇跡としか言いようがない。
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