第三章

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パチンと指を弾く音が聞こえ、繰り出された糸は俺の両足を縛りあげた。 下半身の自由を奪われた俺は正面に倒れ無様に床に這いつくばる。 どうやら蜘蛛男の指から出される糸は直接的な攻撃性を含むものではないらしい。 だが強度は無駄にあるようで、もがいても手で引き千切ろうとしてもびくともしなかった。 身動きの取れなくなったこの状態は詰んだと言っても過言ではない。 「さてと、どうやって殺してやろうかな。窒息死、窒息死、窒息死。あー、オレ、それくらいしか殺す方法なかったわー。うけけ」 にじり寄ってくる男の愉快で仕方ないといったような声。 もう終わりなのか?  俺は何か起死回生の道具はないかと体をまさぐる。 何もない。 唯一あったものは上着のポケットに入れてあった額田推薦の文庫本くらいだった。
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