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次の日。
朝礼前の教室で顔を合わせた額田は何事もなかったかのように、平然とした面持ちで話しかけてきた。
「おはよう、聖沢君」
「ああ、おはよう」
比較的早めの時間帯なのでまだ登校して来ているクラスメートは少なく、教室内は閑散としていた。
津田もまだ来ていない。
あいつはチャイムが鳴るギリギリに駆け込んでくるのが常だが。
「……あのね、聖沢君」
ひっそりとした声で、顔を近づけて額田が俺に囁いた。
「言っておくけど、昨日のことは誰にも話したら駄目だからね」
学校へ来る前に風呂に入ったのだろうか。
額田の艶やかな髪から香る、ほのかなシャンプーの甘い匂いが鼻腔をくすぐった。
「分かってるよ」
言ったところで誰も信じないと思うがな。
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