――序章――

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ケホッと咳込む。何年も録に使用していない部屋だ。辺りにある本棚や、机、床は予想通り、埃に塗れていた。 時々彼女は思う。自分の先生は昔のモノや、昔の文化に強い興味を示す。今回持ってこいと言われた品もその一つだ。たしか……海底遺跡に沈んでいたという武器の破片? らしい。魔術の使用された形跡があると言っていた。自分は全く感知など出来ないが。 それゆえ、彼はそれをとても大事にしていた。しかし、どうして、それをこんな埃に被った部屋に入れているのだろうか? そこだけは彼女が理解しがたかった。 まあ、下手な場所に置いておいて盗まれたら、それこそ悲惨なのだろうけど。 それはともかく、彼女は近くにあったスイッチに手を伸ばし、暗号を解く。ついでに指紋認証もしておいた。私にぬかりは無い!! と思ってみたり。 ガラスケースの外された台座へ手を伸ばす。あったあった。真っ黒い壊れた剣。これの何処が凄いのか? 全く以って理解しがたい。 面白半分で剣を振り回してみる。やはり、何も起きない。予想はしていたが。 まあいいか、と、そのまま剣を引っ提げてもと来た廊下を戻る。 「お待たせしました」 「おお、サンキュー。サンキュー、そいつをあの真ん中に置いてくれ」 地下室へ行くと、既に事は終わっていたらしく、見慣れない魔法陣が石の床に描かれていた。 「一体これを何に使うんですか? ハインドルフ先生」 やはり、聞いた方が早い。そう思い、彼女は先生、ハインドルフに訪ねた。そう言うと彼は目を丸め、ハッとなる。忘れていた、と考えた方がよさ気。 「悪い、忘れていた。 今から行うのは召喚だ。使い魔のな」 はぁ? 彼女は理解に苦しむ。高々使い魔の召喚にこんな大それた魔法陣を用いるものか。見たことも無い。大魔術等に使われそうなモノだ。見たこと無いけど。そもそも魔法陣使うかどうかもわからないけど。 思わず唖然としてしまう。一体何を使い魔にしようというのか? 全く検討もつかない。しかし、彼女はこの魔法陣が簡単なモノであるということを知らない。 「使い魔といっても、質が違う。今から召喚するのは英霊だ。本来召喚出来んのだが、聖杯に導かれ、この時期のみ召喚に応じるんだ。 まあ、見た方が早いな」 そう言って、未だ彼女の手中にある壊れた剣を取り、魔法陣へ近付く。 そして、文字の書かれた紙切れを見ながら、大きく息継ぎをする。
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