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魔法陣から炎が漏れ出す。驚くのは二人。少女は召喚の光景にあたふたとあたりを駆け回る。見たことの無い、それも激しさを伴う光景は、彼女にとって驚きそのもの。目を白黒させている。
そしてもう一人、彼は彼で想像以上の光景に目を丸めた。聞いた話では、炎など余計な物が漏れ出したりはしない筈なのだが。ぬかったか?
しかし、それでも、目線は陣の中心へと注がれていた。
やがて、炎が止み、呼び出された英霊が姿を現す。
予想通りかもしれない。男は口許を緩ます。呼び出そうとしていた英霊で十中八九間違いない。
「問うぞ? 貴様が俺のマスターか?」
問い掛けるは中世の鎧の様な物を纏った、炎の如し真っ赤な髪の青年。鋭い瞳も、全く同色である。どこと無く、イライラしている様だ。足先がぶるぶる動いている。
「ああ、そうだ。俺がお前のマスターだ。クラスを聞こうか?」
「クラスか? 俺のクラスはキャスターだ。まあ、魔術は余り得意ではないがな」
「だろうな。俺の推測が正しければ、君は道具の方が得意だろ? ほら」
ハインドルフは黒く、一部が掛けた剣をキャスターへ投げる。彼はそれを乱暴に受け取り、真っ赤な眉を動かす。
蚊帳の外であるセイリンは、余りの驚きに完全に腰を抜かしていた。それは何故か? 召喚されたキャスターの背には、六対の巨大な羽が生えていたからである。
しかし、半分は灰色。その姿、まさに堕天使。しかし、不思議と悪い感じはしない。イライラしてはいるが、寧ろ、彼の面持ちからは優しさが伺える。
気付けば、不思議とキャスターに見入っていた。
「ほぉ。どうやら真名を明かす必要は無さそうだな」
キャスターはそう言うと、剣を少し振るう。すると、不思議な事に、その刀身に炎が燈った。彼の強い道具作成により、一瞬にして宝具と化したのである。
それを知るハインドルフは、心が躍った。彼のステータスを既に見ていたからである。キャスターにしては筋力、俊敏が高い。キャスターながら物理での戦いもできる。これは大きなアドバンテージである。
こんな状況で心が躍らない訳がない。
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