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今日はいつもの休日のようであってそうじゃない。故に俺が起きて朝食を摂り着替える時間は今までで最高記録を叩き出してることだろう。
未夏ファン、または未夏検定3級を持っている方々ならすでに知ってるかと思うけど、今日は未夏の誕生日なのだ。
誕生日おめでとうとの知らせはすでに電子媒介で伝えており、今から家に出向き直接もう一度言おうかと思っている所存。
9時になる前くらいだろう。靴を履いてる俺の背中を見ながら見送る母さんがこんなことを言った。
「今日未夏ちゃん家で誕生パーティーやるんでしょ?ちゃんとあっちの家に許可取ってるわよね?」
「当たり前でしょ。そんな無礼な子に育てた覚えでもあるわけ?」
「だから心配してんのよ」
泣きそうになった。
玄関前の鏡で最終服装チェックをしていると(前方涙により若干霞んで見えない)、本題は今からよと母さんが言う。
「そのパーティー私も参加していい?」
「えっ、いやそれは…」
正直それはかなりやめて欲しい。マザコン疑惑が浮上でもしたらどう責任取ってくれるの?
「………そうね。言い方が悪かったわ。じゃあこうしましょう。そりゃ未夏ちゃんを祝いたいのもあるけど、久々にお母さんの方ともじっくり話したいわけよ」
てゆうかそっちが本音だろう。そういう発言を言わないのは、言うと殺されるためである。
「息子としても未夏ちゃんのママがいるのは正直嫌でしょ?」
「…………」
「何動揺してんのよ。それを本人に言うわけないじゃないの」
「その不安が拭い切れないから黙ってるんだよ」
「バカね。さすがに息子の恋路を邪魔したりしないわよ」
………これは信用していいものか。母さんの目はまぁまぁ真面目な表情。これは2割ほど裏切る可能性のある顔だ。
「………うん。正直友達と俺と未夏で過ごしたい」
「でしょ?だから私がそこは何とかしてあげる。メリットしかないと思わない?」
「分かった。よろしくお願いします」
「協定締結ね。じゃあさっさと迎えに行け息子」
「はいは~い」
ドアを閉める瞬間、母さんの口角が上がっているのが見えた。あれは何の笑みなんだろう?
久々に友達と話せるから?いや、母さんの場合、あれは笑みじゃなくて悪巧みの表情の可能性もあるな。
「…幸せそうね」
彼女は嬉しそうに笑っていた。
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