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「ハッハッハ、固いよ京介くん。僕は加賀屋照久(テルヒサ)。未夏の父『だった』者だよ」
?、だった?
お父様はあくまで強調はせず、淡々と抑揚がなく言ったが、その言葉は違和感を作るには充分だった。
ここは現在店の休憩室みたいな場所。だが、妙に生活感がありすぎる気がする。
あまり踏み込まない方がいい?バカな。これを知らずに喉にとどめておくのは不可能さ。
「だったって………。どういうことですか?」
お父様は小さくため息をつく。
「未夏の前でこういう話はしたくないんだけどね。でも付き合っているなら彼女の家の事情は知っておくべきだ。僕たちは離婚をしたのさ」
あの時、お父様の話をしたときの未夏の顔を思い出した。なるほど……だからか、と。
未夏を見ると少し悲しげにうつむいていた。胸が痛み出す。
「僕はね、昔から思ったことはすぐ言ってしまう質なんだ。最近はだいぶ抑えれるようになったけど、そう………未夏たちと過ごしているとき。あの時は本当に申し訳ないことをしてしまった」
お父様は内容までは深くは話さなかった。当然だろう、だって実の娘未夏が目の前にいるんだから。
「………実はね。今日未夏と会うの1年半ぶりなんだよ」
「え!?そうだったんですか!?」
だから未夏はあんなにはしゃいでたのか。酷いファザコンの疑いがあったけどそうじゃないらしい。
「うん。実は妻……いや佳美(ヨシミ)に親権があってね、僕と未夏が会うことは基本許されていないんだよ」
俺の冷や汗はすごかった。これ……未夏のお母様にバレたらどうなるんだろう?と。
「たぶん、君が未夏を連れてきてくれたんだろう?本当はこういうのいけないんだけどさ、ありがとう京介くん」
お父様はぺこりと俺にお辞儀をした。つられて俺もお辞儀をする。それを見た未夏もつられてお辞儀をした。なにこれ。
「僕は君と付き合うことは応援するよ。京介くんは良い子だと思うよ。未夏を安心して任せられる」
ニコリと笑うお父様。俺の顔は少し赤くなったが、元気よく頷いた。
嬉しい。認められた。しかも未夏のお父様に。
お母様の方はどんな感じなのか分からないけど、とりあえず一歩前進できた気分だ。
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