ある日のこと 〈美加〉

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「行ってきます」 誰に言う訳でもないけど、あいさつ。 抜けない習慣。 平日の朝、月曜日。 狭いアパートから、私は逃げ出す。 人混みをかきわけ電車に乗った。 満員電車はいつものように1つの駅に止まる。 “…─駅───駅──…” 駅から徒歩10分。 県立森川高校。 これが私───夏本美加の通う高校。 *** 人が少なくなった道路を、美加はウォークマンを片手に進んでいた。 「おい、夏本!音楽を聴きながら登校するなー」 見上げれば1人の教師。 「これは俺が放課後まで預かっておく」 教育指導の浅井。 「痛っ…」 浅井は、無理やり美加の手からウォークマンを取り上げた。 「何だその目は?規則を守らない方が悪いんだぞ!」 美加の視線に声を強めながら言う浅井。 (うるさいな……)  
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