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「…………」
「……じゅ、12月ももう終りね」
「そうだな」
あれ、ふりだしに戻ったぞ。まさか今の質問がドロップポイントだったのか。
不覚。
「…………」
沈黙が包む。
なら、俺が破ろう。
「そういえば。何でお前は残ってるんだ」
「え?」
「ほら、もう授業もないだろ。後は入試まで自宅学習だしさ」
正気に戻ったらしい天草は、あぁ。と頷くとその小ぶりな口を開く。
「……別に」
「ん?」
天草はカールした睫毛を揺らすと。
「なんとなく。暇だから」
あ。
そうか。彼女も同じなんだ。多分早々に進学先を決めて、受験戦争から離脱した。
「……俺も」
微笑むと、思い返す。
そういえば、彼女とは三年間同じクラスで、ほとんど隣同士だった。
だけど今までこうしてきちんと会話したことはなくて。
知っているのは、彼女が眉目秀麗で文武両道なことと。
高校入学と同時に沖縄から来たということだけだ。
ただそう。
意識すると、なんとなく近寄り難かった。
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