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「見て……」
彼女に促され、俺も水滴で若干曇った窓に視線を移す。
灰色の空から。しんしんと。まるで小説に出てくるような擬音を放って。
「雪だ……」
「えぇ。雪よ。この目で初めてみた」
優しい雪の粒が降り始めたのだ。
「今年もクリスマスは降らなかったからな……」
呟いて、何気なく傍らの天草に目を遣れば、彼女は純粋に幸せそうな笑みを浮かべていた。
「天草……」
眉が目が口が……顔の全てが喜びに溢れている。
そうか。
きっと彼女はこれを待ってたんだ。
天から降り注ぐ純白の宝石が、こうして地上に舞い降りるのを。
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