3人が本棚に入れています
本棚に追加
放課後
「明日から冬休みだな」
「そうね。高校生活、最後の冬休みだわ」
目の前の天草アリサは感慨深げに答えた。
俺はそんな彼女を暫し呆然と見詰めて、何度か瞬きを繰り返すと頬杖をついて嘆息した。
「……どうかしたの?中条くん」
艶やかな黒髪を梳きながら憂いげな瞳で尋ねる天草。そんな一挙一動がいちいち男子たちの目を引くのだが、本人には自覚がないらしい。
「いいや。別に」
「ふーん……」
特に言及してこない。
彼女も別段興味はないらしい。
ところで、誰もいない教室とはなぜこんなにも広いのだろうか。
俺たちの小声の会話すら響き渡る。
外からは雨がひたすらアスファルトを打つ定期音だけが聞こえ、二人だけのこの空間をより際立たせている。
最初のコメントを投稿しよう!