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ーー3月
八原高校卒業式……これ迄の生活との別れを惜しむ者、これからの生活に希望を膨らませる者。
様々な人の中で私は一人、深い溜め息を落とす。
「あぁ……ついに卒業しちゃった……どーしよう……」
溜め息の原因は『卒業』その物。
「就職も進学も出来ないままに……寮の退去期限もあるのに……」
呟く度に溢れる溜め息も最早数知れず、繰り返される溜め息を落とした時、肩に手が落ちる。
「暇人見つけた」
「誰が暇人よ、陽」
手の主は、最早勝手知ったる幼馴染み、折笠陽。
「イヤ、暇人だろ就職も進学もしてないんだから」
「うっさい、誰が好き好んで……」
最早悪態をつく気にもならない、顔を伏せて深い溜め息をもう一度。
「……っとに……美佐、そんな事より腹減ったし何か食いに行こーぜ」
「そんな事よりって何よ!
……はぁ……そうね、そうしようか……」
陽の笑顔に、すっかり毒気を抜かれていたーー
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