二の刻み 少女と呪われた村

5/6
前へ
/13ページ
次へ
これなら応戦できるかもしれない。非常に無謀な考えだが、今はそれしかなかった。 「大人しく、出てきなさい」 警官は手に持った凶器を扉を破る気らしい。しかし、散弾銃というのは、離れれば威力が著しく低下するものだ。扉を破るのならばそれなりに近づかなくてはならなかった。気味の悪い足音が扉の前まで聞こえた。この機会を逃すほど、七瀬北斗は間抜けではなかった。 扉に向けて、思いっきり斧を振り下ろした。扉を両断する巨大な斧。その光景は、シャイニングというアメリカ映画のワンシーンを彷彿させた。 真ん中で裂けた扉の向こうから断末魔が聞こえてくる。そのま斧を振り下ろす。扉の向こうからは、もう断末魔は聞こえず、男が倒れる音が響くだけであった。 北斗は笑っていただろう。人間誰しも、暴力的欲求は抱えているものだ。問題はこれから、彼がどのような行動をするかだろう。彼の人間性が見られそうだ。 彼はどうやら善人だったらしい。倒れた警官を抱き起こし、声をかける。 「大丈夫ですか!?もしもし!」 返事はない。だが、警官は生きているようだった。いや、少し違う。呼吸はしているのだ。意識もあるのか、こちらをじっと睨み付け、何か言いたそうだ。だが、心臓が動いていないのだ。頸動脈に触れてみても、鼓動を感じない。 その時、何かが聞こえた。野太く低い音、まるで老人の囁きのようだ。しかし、それははっきりと、大きく聞こえ、頭が割れそうなほど響く。 その時であった。先ほど斧で殴った警官が、むっくりと起き上がったのだ。足取りがおぼつかないようだが、明らかにこちらを狙っている。構えているのは先ほどの散弾銃ではなく、腰に着けていたのか、一般的な警察官が持ち歩く拳銃だ。取り回しがいい分、斧に負けることはないだろう。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加