一の刻み 便竜村を求めて……。

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 山添いの道路を、一台の軽量自動二輪車が走っている。免許を取ってまだ半年ほどしか経っていないため、安全運転を忘れない。  乗っているのはやや背が高めの男性、名前は七瀬北斗。高校三年生である。夏休みに行くところもなく、進路も決まったため、ちょっとした息抜きとして、先日暗闇事務所という掲示板で見た、地元の怪しげな噂を調べにやってきたのだ。このようにオカルト関連が趣味だが陰気と言うわけではなく、軽快かつ礼儀正しいしゃべり方や、意外といい運動能力から友人も比較的多い方だ。  しかし、彼には親戚がいない。両親がどちらも一人っ子だったようだ。祖父母には先日会ってきたばかりなので、わざわざお盆に会う必要もないのだろう。  彼は暗闇事務所でSeven Starというハンドルネームを使っているが、これは彼の七瀬という苗字と北斗という名前を意識したものである。断じてタバコの銘柄ではない。  午後4時頃、北斗は目指していた便竜村と呼ばれる村付近にやってきた。本当なら昼間のうちにやってくる予定だったのだが、思った以上に遠かったようだ。
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