一の刻み 便竜村を求めて……。

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 村の入口を探しながら、林の中を歩くことはや3時間、日帰りの予定だったので夕飯など持ってきているはずもなく、腹は減るわ歩き疲れたわで、もう何もする気にもなれなかった。  ふと、目の前に現れたのは一本の大木。それはもう500年以上生えているのではないかというくらい大きく、しっかりとしていた。だが、まだ生き生きとしていて、季節はまだ夏だというのに、その枝には、葉も実もなかった。しかし根本には、とても美味しそうに見えるキノコが生えていた。いや、とても美味しそうではない。やや黒ずんだ紫色で、形は非常にグロテスクである。こんなものを食べたなら、食あたりどころでは済まされず、一瞬であの世に行ってしまいそうだ。だが、北斗の目には、とても美味しそうに見えているようで、彼はそれを一つつまみ取り、食べてしまった。  するとどうだろう。先ほどまでの空腹と疲れは一瞬で吹き飛び、どこまでも走れそうな力がみなぎってくるではないか……。  北斗はそのまま、林の中をバイクを押しながら進んでいった。  小さな灯りが見える。あれが便竜村の入口だろうか……。
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