二の刻み 少女と呪われた村

4/6
前へ
/13ページ
次へ
ふと感じる、背後から向けられる何か。何を向けられているのかは分からないが、避けろと彼の全身の筋肉が告げていた。それを脳髄が承認するのは一瞬で充分であり、気づいたときには左側に回避体制をとっていた。 次の瞬間、先ほどまで立っていた場所には爆音と煙に包まれていた。 目の前にいるのは、ごく普通の駐在員のようであった。しかし、明らかに異様であったのが見えた。まず、服が赤い。赤いワイシャツなどではない。どう考えても血のようなものをあびたかのようになっていた。そして顔も、ところどころが膨れ上がっていた。まるできのこが生えてきたかのようになっているのだ。そして何より、その手に持っているものが明らかにおかしい。普通、警官が持つものは拳銃、しかも初めは空砲を発射するはずだ。しかし、先ほど撃たれたのは明らかに実弾。しかも、売ったのは拳銃などではなく、ツインバレルの散弾銃であった。 あんなもので狙われたのならば、死を覚悟するのが一般的な人の有り様だろう。だが彼は七瀬北斗である。そう簡単には命を捨てることはない。とりあえず目についた小屋に逃げ込み、内側からカンヌキをかける。相手は警官だ。こちらを射殺する気だろうとも、器物破損はしないだろう。なんとかしてこの状況を打破しなければならない。何故ここまで冷静でいられるのかは分からない。 ふと、壁に立て掛けられていた巨大な斧が目についた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加