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何も持っていない僕
この右手を
天に伸ばせば
何か掴めるのだろうか
それはあなた次第
人生は案外
その人の思い次第で
どうにでもなるものなの
そう言って笑った君は
僕の左手を奪って行った
けれども僕は
右手を天に
伸ばし続けた
左手よりも大事なものが
あるような気がしたから
すると君は
少し残念そうな顔をして
僕の右足を奪って行った
それでも僕は
右手を伸ばし続けた
半分は意地だった
そんな僕の姿を見て
君は何も言わず
左足も奪って行ったね
僕よりも辛そうな顔をして
とうとう右手だけになった時
ふと考えた
本当に僕は
何も
持っていなかったのか
気がつくと君は
僕の前から
姿を消していた
僕は残された右手で
恐る恐る
自分の体に触れてみた
左手も右足も左足も
しっかりとそこにある
あれは夢だったのか
君は幻だったのか
けれど僕の指先には
確かに
君の涙が光るのだ
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