4人が本棚に入れています
本棚に追加
「これは、失礼。私は本村探偵事務所の本村と申します。」
そういって本村はホームレスに名刺を渡した。
「実は、古い友人から仕事を頼まれまして…。」
本村がそこまで言うと、ホームレスは口を開いた。
「僕が、何か…?」
「どうやらあなたに殺人の容疑がかかっているようで…。」
「ぼ、僕がですか?そんなことしてませんよ。第一、ここ一週間家から出てませんし。」
「それは承知です。ですから容疑と言ったでしょう。確信とは言ってません。」
よく分からないといった顔をしているホームレスを前に、本村は冷静な口調で続ける。
「野村健太郎という男性をご存じですか?」
ホームレスは顔色を変えた。
「大学時代からの親友ですが…。それが何か?」
本村は少し間をおいてから答えた。
「昨晩の21時頃に、野村さんが殺されました。全身7ヶ所を刺され即死だと…。」
「嘘だろ…。」
ホームレスは言葉を失った。しかしそれは野村が死んだからではない。もちろんそれもあるかもしれないが、彼が驚いた理由は他にあった。
最初のコメントを投稿しよう!