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「私、見たもん。口裂き女!」
「はいはい、そういう冗談はいいから。それより俺は――」
眠いんだよ。と言いかけたところで言葉をとめる。視線を向けた千花の顔が、冗談を言っている様には見えなかったからだ。
「……見たっていつ?」
「昨日の夜だよ。部屋で雑誌読んでたら、アイス食べたくなってコンビニまで行ったんだ。ほら、この前の放課後に亮太が奢ってくれた練乳のやつ。あれ、他のより甘くておいしいんだよね」
あの地味に高かったやつか……って、今はそんなことはどうでもいい。どうして女の話はこうもよく脱線するのだろう。
「アイスの話はいいから。それより口裂き女」
「あ、そうだったね」と完全にアイスの方に気が向いてしまった千花。こいつ本当に話す気があるのか。千花の中で、アイスよりも重要度の低い口裂き女が少し哀れに思えた。
「アイス買った帰り道にね、せっかくだから少し散歩していこうと思って、海浜公園に行ったんだ」
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