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「最近、あの辺りって殆んど人いないよな」
以前は昼夜問わず賑わっていた海兵公園も、口裂き女の事件が話題になってからは、陽が沈む頃になると一気に人の気が少なくなる様になった。深夜にいた暑苦しいカップル達の姿が懐かしい。
あの周辺を夜間にうろついているのは会社から帰宅する人間と、急ぎの用事のある地元の人間しかいない。昼間はともかく、夜間はゴーストタウンにでもいるのではと錯覚するくらいだ。
「うん、散歩しててちょっと怖かった。それで帰ろうかなって思って、木がたくさん植えられてる階段の方に向かったの。そしたら木の陰から変な音が聞こえてきて……」
「見ちまった訳か」
「うん。でっかい鉈みたいな刃物を何度も振り下ろしてるところ。私、動けなくて、声も出なかった」
当然だろう。俺だって同じ場面に出くわしたら、きっとその場に固まってしまったと思う。
「そしたらね、犯人と目があったの。口から頬にかけて大きな傷跡があったけど、凄く真っ白な肌で、綺麗な長い髪の女の人だった」
どこぞのホラー映画みたいな話だな。だが、そんなことよりも一つ気になることがあった。
「でも、おまえ、犯人の顔見たのによく殺されなかったな」
普通なら口封じとか言って殺されそうなものだが。しかも相手が連続殺人の犯人なら尚更だ。
「私も殺されるかと思ったよ。刃物振り上げて、こっちに近寄ってきたし。でも、動けなかった」
「そりゃ、おまえじゃなくても怖くて動けねぇよ」だが、千花は頭を左右に振った。
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