第一章

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「ねぇ、知ってる? 口裂き女って、顔に大きな傷があるんだって」 「それって口裂け女でしょ?」 「違うよ! 昨日、ネットの掲示板に書き込みあったんだよ。口裂き女を見たっていう女の子から」  椅子に座って話している女子高生の会話が耳に入って来た。彼女達の話が本当なら大ニュースだが、残念ながらガセネタだろう。  この手の事件が起きると必ずと言っていい程、嘘の情報が流れる。特にインターネットの掲示板などは出鱈目な情報が多く飛び交っている。 「嘘だー」 「ホントだってば!」 「実際にあんたが見た訳じゃないんでしょ?」 「それはそうだけど。でも、私達と同じ港区に住んでるらしいよ、その子」  それだって怪しい。話に信憑性を持たせるために……って、たかが女子高生の噂話に何真剣に考えているんだ。これが職業病と言う奴なのだろうか……。  そんな自分に嫌気が差し、頭の中を今晩の献立に切り替えることにした。  仕事を終えて希実と一緒に食べる夕飯は、今、僕にとって一番心安らぐ時間なのだ。
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