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そのうちにリストの整理を終えた早川さんが、僕に近づいてきた。
「今日はごめんね。木村くんに手伝わせることになっちゃって」早川さんは本当に申し訳なさそうに言う。
僕は早川さんを気遣い「仕方ないよ」と答え、意味ありげに彼女に顔を向けた。
すると早川さんは、照れくさそうにしながらも「木村くんって優しいのね」と僕の胸の辺りに視線をよこした。
しばらくして、僕の仕事ぶりを見ていた早川さんが「手伝ってくれているところ悪いんだけど、その本はそこじゃないの」とこれまた遠慮がちに言った。
「え、そうなの?」並べ方に自信があったわけではないが、どこが違っているのか把握できない僕は聞き返していた。
「本はね、五十音順に並べるだけじゃだめなの。本にはジャンルというものがあるから、まずは種類別に分けなきゃ」
「なるほど」僕は早川さんの言葉を聞きながら、自分の間違いを見直す。
「そうなの。だからあの本はここで、この本はあそこね」
「分かった」と僕は言いながらもため息が出てしまった。
それを見た早川さんは「なんだか、ごめんね。手伝ってくれてるのに、注意とか。木村くんだって本当は帰りたいのに」と俯きざまに口にした。
僕は誤解してほしくなかったので「そうじゃないんだ。ただ間違ったことに少し落ち込んだだけなんだ」と早川さんの目を見ながら言うと、彼女はとても嬉しそうに微笑んだ。
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