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それからしばらくの間、僕たちは二人で本の整理をしながら、たわいない雑談をした。
僕は楽しかったし、早川さんの話し方、声の響き、そして時折見せる彼女の笑顔は心地よかった。
さらに言えば、僕は早川さんの話に興味がそそられ、いつまででも話していたいなと感じていた。
作業も終盤にさしかかった頃、早川さんは唐突に「山下くんの家、大丈夫だったかな?」と心配そうに窓の外を見つめた。
雪はいまだに降り続いている。
僕はそれを眺めながらも「大丈夫に決まってる」と断言した。
だけど早川さんは不安そうに「でも」と言い「山下くんの家、山奥にあるんでしょ。雪が降って出て来れないんだよね?」と続けた。
早川さんは「だから木村くんが手伝うことになったんじゃない。山下くんの代わりに」と、そう言いたそうだ。
僕は「そんなんじゃないよ」と短く言葉を切った。
「ほら、今日クリスマスだからさ。あいつ、彼女と遊びたいだけなんだよ」と僕は呆れるように言った。
とにかく早川さんが心配してやる必要はないのだ。
「それに、山下が山奥にいるなんて可笑しいだろ」と僕はおどけてみせた。
「何それ」と早川さんは困惑した表情を浮かべ、首を傾げたけれど、すぐに「変なの」と微笑んだ。
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