雪の光

　「ところで木村くんは、この後何かあるの？」早川さんは、彼女が担当している隣の本棚がほとんど片付いて、残り少ないうちの一冊を手に取った時、僕に言った。

　「え、何で？」僕も本を並べながら聞き返す。

　一方、僕が担当している本棚はまだ半分も片付いていない。

　綺麗に並べることを意識しすぎたのか、手際が悪くなっているようだ。

　僕はまた少し落ち込む。

　「ほら、今日クリスマスじゃない」早川さんの透き通った声がした。

　けれどそれが、先ほどの会話の流れからなのか、単にちょっと気になっただけなのか、何か深い意味があるのかどうかは、釈然としない。

　またこれは偶然なのだろうか。

　僕は早川さんの手にある本を見て、はっとした。

　スコット・フィッツジェラルドの『気にかけておくべきこと』

　僕はこの本と出会ってからまだ数ヵ月ほどしかたっていないのだけど、それでも感銘を受けたことは、今でも鮮明に覚えている。

　当時、途方に暮れていた僕に、生き方の指針を与えてくれた。

　そこにはこうある。

　『いつも気にかけておくべきこと：勇気、清潔、効率、馬術』

　また、最後にもう一つ気にかけておくべきこととあり『今、自分が何をしようとしているかということ』