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「それで…お式はいつにするの?」
母の言葉に俺と由依は顔を見合わせる
「それなんだけどさ、式は挙げずに籍だけ入れたいんだけど、ダメかな?」
俺の言葉に母は一瞬目を伏せ、そのまま視線を由依にうつす
「由依さんはそれでいいの?ドレス…着たくないのかい?」
母の言葉に由依は恥ずかしそうに頬を染めると、小さな声で答えた
「はい、構いません。実は…私孤児で身寄りがないものですから…。式を挙げても、親戚とか誰も呼べないし……。それで私から拓人さんに頼んだ様なものですから。」
由依の言葉は最後は聞き取れない程小さな声になっていた。
言いづらい事を言わせてしまった
本当は折を見て俺が言おうと思ってたのに…
俯く由依と俺を交互に母は見つめると、空になった湯のみを静かにテーブルにおいた
「由依さん、そんなに気を使わなくていいのよ。私も主人に先立たれて拓人と二人家族だし…。お式は挙げなくても構いませんよ。だけど、写真くらいは撮っておきましょう。大切な記念になりますからね。」
微笑む母に、由依は顔を真っ赤にして泣き出した。
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