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武田信玄の使い番に初鹿野伝右衛門という勇者がいた。
この伝右衛門、背中に『香車』と書かれた陣羽織を着ている事で有名であった。
『香車』とは将棋の駒の一つで、前方にだけ一直線に進む事が出来る。
つまり伝右衛門は『俺は香車みたいに一直線に敵陣に突っ込むZE☆』とアピールしていたのだ。
だが、主である信玄はあまり良い顔をしなかった。
信玄「自ら『香車』って名乗るなんて、ちょっと調子乗ってね?」
だが、伝右衛門は数々の戦で猪突猛進の働きを見せ、『香車』の名に恥じない勇将となった。
しかし信玄はまだ不満げで、何やらぶつくさ文句を言った。
信玄「でもさ、敵に突っ込むだけだったら、真の勇者って言える?
無事に生還してこそ真の勇者でしょ?『香車』は後ろ下がれないジャン」
これを聞いていた伝右衛門、つかつかと信玄に歩み寄ると、突然陣羽織を脱いだ。
そして陣羽織を裏返すと、それを着ながら言った。
伝右衛門「それなら、『金』に成って戻って来るので大丈夫です」
なんと伝右衛門の『香車』陣羽織は、裏面に『金』と書いてあるリバーシブル仕様だったのだ。
(※将棋で『香車』は敵陣に入ると裏返って『金』になる事が出来る。
前進のみの『香車』と違い、『金』はバックも可能)
伝右衛門のこの頓知の効いた返しに、信玄も周囲の諸将も大爆笑したそうである。
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