733人が本棚に入れています
本棚に追加
また、武田信玄の使い番は旗指物は『白地に黒いムカデ』の柄にしなければならないと決まっていた。
これがあの有名な『むかで衆』の異名の由来である。
さて、初鹿野伝右衛門も、そんなむかで衆の一人であった。
だがとある合戦の時の事、信玄がふと伝右衛門の旗指物を見ると……。
……ムカデが描かれていない。
いや、それどころか真っ白な無地の旗を指しているではないか。
これは武田家の軍法違反である。
信玄「何だアレは?むかで衆なのに白い旗指物を……ってまたアイツかよ!?今すぐ呼び出せ!!!!」
以前の『香車』陣羽織の件で伝右衛門に目を付けていた信玄、早速彼を呼び付けた。
信玄、軍法を破った伝右衛門に怒り心頭である。
信玄「お前はむかで衆なのに、軍法を破って白い旗を指している!!
何で軍法違反を犯したのだ!?!?」
だが伝右衛門は、全く悪びれた様子も無く言った。
伝右衛門「……は?私は何にも軍法違反などしてませんよ?
旗をよ~く見てください、よ~く……」
言われた信玄が旗をじっくり見てみると……。
確かに、ムカデは描かれている。
隅~っこの方に、ち~っちゃく。
信玄「……ム、確かに……。
しかし何故こんなちっちゃく描いてるんだ?他のむかで衆の様に大きく描けば良いのに」
伝右衛門「いや、そんな事をすれば、私が他のむかで衆とまぜこぜになってしまいます。
私の陰が薄くなっちゃうじゃないですか!!!!」
平然と答える伝右衛門に、信玄は大笑いして彼を許したそうな。
……事前に仕込みしてるよね?伝右衛門?
最初のコメントを投稿しよう!